国語読解問題・線引きのツボ(2)~論説文
今回は、もう少し突っ込んで「論説文」の線引きのツボを書いてみたいと思います。基本は小学5~中学生対象ですが、予備校でも言葉を変えて似た教え方をしていました。国語って教科は古典や漢文が増えるぐらいで基本は一緒なんです。
さて、私は有名予備校講師のいわゆる方程式のようなものは参考にはなると思いますが、指導には取りいれません。彼らのように自分のセオリーに合った問題を選んで「ほーら僕の言った通りでしょ」とやるのは簡単。しかし、現場では「先生、言う通りにやったら間違えました」みたいなことがしょっちゅう起きるわけです(笑)。
なぜか?
それは「文章は人間が書くもの」だからです。確かに理系の人が書く文章は、セオリーにハマっている場合もあるのですが例外がもし入試で出たらどうする?と考えると、怖くてそんな100%でない方程式は教えられない。…というわけで、私の目的は「どんな問題にも応じられる読解・思考・判断力」を身につけること。線引きはその補助に過ぎません。
…というわけで、「論説文」の線引きのツボはシンプルです。最初は「読んだところ」全てに引いていた線を、だんだん減らして行きます。
・具体例に引かない
・たとえ話に引かない
・データや引用に引かない
ただこれだけです。
最初から「大事なところに引け」は難しいので、「ここはいらんやろ」というところに引かなくするだけ。だんだん慣れてきたら「問題提起の文は外すな」とか言えますが、無理はさせません。
要約の練習も一緒で、「最初に要点をずばっと見つけられる」ことを要求しないで文章を渡し、「無くてもええ文を消していこう!」という練習をします。残った文をつないで読んで意味が通じれば、それが要約です。だからまずは「無くてもいい文」を見分けることができれば十分。
ただ、論説文でもう一つ言うなら「偉そうな文に線を引け」と言います。偉そう、というのは小学生向けの言い方で「抽象的で断定的な文」という意味です。論説文で一番強調される作者の意見ってのは、基本的に「包括的」にまとめますので抽象的な表現になりがち。そして「~である」「~にちがいない」と断定的。でも私がそれに線を引かせるのは「偉そうな文=重要文」だからではありません(もちろん、かなりの確率で重要文です。ただ100%ルールではありませんので使いません)。 人間は「抽象的な文を読み流す癖がある」からです。
たとえば、健康食品のキャッチコピー。
1.体の潜在能力を活性化させる!○○エキス
2.筋肉が10歳若返って疲れにくくなる!○○エキス
即興なのでイマイチですが(笑)、1と2を比べた時に頭に入りやすいのは2の方ではないでしょうか?人に話す時も「これを飲むと筋肉が10歳若返るんだって!」と話しやすいのは後者です。具体的な文は理解が楽で、頭を使わなくていい。しかし、論説文で大事なことは「1」の文章を「2」のような具体イメージに変換して読めることなのです。
体の潜在能力=体が本当は持っている力=体力・筋力・瞬発力
活性化=活動が盛んになる
「自分が本来持っている体力や筋力が、○○エキスを飲むとどんどん力を発揮するんだな、つまり元気になるんだ」というところまで頭を使って、初めて1のキャッチコピーが理解できたことになります。この変換の作業を嫌うのは、子どもも一緒。するすると読み飛ばしていきます。
「偉そうな文に線を引け」は「わかったふりをするな、こういう文こそ立ち止まって考えて読め」という合図として引かせています。論説文はほぼ「抽象的な文が意味不明」で挫折しています。「脳内変換」のトレーニングを積まないと、解けるようになりません。ここで役立つのが、前に書いた会話の感覚で国語を解く「ラブラブ国語学習法」なのです。
意味不明な文を人に説明しようと、わかりやすい口語に変えようと努力すること。そこには語彙力も必要です。このトレーニングを繰り返すことで、論説文が本当の意味で「読める」ようなります。私の論説文の授業の半分以上は、この「変換」を子どもに考えさせることにかかっています。
小説はまたアプローチが違うので、いずれ書いてみたいと思います。
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コメント
先日メールした、ド田舎でがんばる母です。
前回、今回と、線引き読解のコツをありがとうございました。
入試の国語過去問集をばらして、ひたすら論説文に取り組んでいる最中です。
私なりの経験からのやり方でやっていますが、くろねこさんのやり方もさっそく取り入れてやってみたいと思います。
ちなみに、なっかなか、一筋縄でいかないのが、「接続語」。
単語カードで、“接続語神経衰弱”なんぞを作ってみたりして、いろいろ努力しているんですけれど・・・。
一喜一憂の毎日です。
投稿: yasuっち | 2004.05.31 10:58
接続語の「逆接」とか「添加」などの意味を暗記しているのですか?それとも穴埋めかな?
短文を使った接続語の穴埋め練習は効果がありますよね。ご健闘をお祈りいたします。
投稿: とと | 2004.06.02 01:41
もちろん、「短文を使った接続語の穴埋め練習」もやりました。
「短文」なら一応理解できているのかな、というレベルだと判断できても、実際に長文の中で、接続語を選ぶ問題になると“撃沈!”ということがまだまだ多いのです。
実際の問題文では、当然のことながら、「単語と単語」をつなぐわけではなくて、「文と文」あるいは「段落と段落」をどうつなぐかが問われるわけですものね。
そうなると、前後の文や段落の要点がしっかり把握できている必要があり、そこが試されているんですから。
この要点把握にも、「キーワードの線引き」をもっと生かしていきたいと思っています。
間違えるときというのは、たいてい、面倒くさくなって感覚的に記号を選んでいることが多く、やり直しを命じればきちんとできることも多いのです。
でも、試験は「一発必中」でなければいけませんから、ね。
ちなみに。
“接続語神経衰弱”は、「『だから』は『順接』」「『しかも』は『添加』」って用語を暗記させるよりも、『だから』『それで』『したがって』『しかも』が並んでいるときに、「『しかも』が仲間はずれだ!」とパッと選べるようにするための練習法としてやってみたものです。
投稿: yasuっち | 2004.06.02 09:41