教育実習生とトークバトル(1)
この間、同じ校で働いていたアルバイト講師からメールをもらいました。ここを読んでいるそうで「懐かしいです」と言われて私も懐かしくなりました。ウチの塾は学生を教壇に立たせていました。雇うのは校長権限ですので、自分で面接して研修して、講師デビューをさせます。学生は中学生と年が近いので、子どもの気持ちや受験生の気持ちをよく理解してくれますし、何せ脳が若いからどんどん吸収して素敵な先生に育つことが多いです。(学生だからダメってのは偏見です)
私の育てたというとおこがましいのですが、私のそばにいた先生の中で「最高傑作」と思っているのがT先生です。今は京都の有名私立高校でバリバリやってます。そんな彼と、連載を持っていた時に対談もどきをしたことがあります。懐かしいのと、今読んでもなかなかの内容ですので2回に分けて掲載します。
文体は少々違いますが、お許しを。
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「教師の卵とトークバトル」 2001年10月「大阪新聞」掲載
T君は私が塾で校長をしていた時の講師である。教育大に通う三回生、数学の教師として塾では人気者の彼が学校教育の現場に出向いてどう思ったか―前から連載のネタに狙っていたので、教育実習後インタビューに出向いた。二回に渡って収録してみようと思う。
―塾も学校も両方見て、T君はやっぱり学校の先生になりたいと思った?
「そうですね、中学一年生を担当したのですがみんな話は聞いてくれるし、交流もありました。僕は学校教師になりたいと確信しました」
―じゃあ、教育実習で何か発見があったのね。
「まず、子供の反応に対して敏感になりましたね。その原因にはクラス活動に参加したこともあります。文化祭の話し合いに立ちあったんですが、子供の目の色というのは言葉にする子が少ない分、物を言う。塾ではそういった、じっくり考える子供を見る機会がなかったんで、これは発見でした」
―確かにクラス活動なんかは学校教育のいい部分やね。肝心の数学の授業についてはどうだった?
「関数の動点の問題解説をしたんですが、最初は答えの導き方の授業になってしまい『塾の授業だ』と叱られました。僕の担当教官は、教室にロープを張ってグラフの上を動いていく点の考え方そのものを理解させよ、と教えてくれたので実際にやってみました」
―生徒の反応はどう?
「そりゃ、紙の上だけでやるよりロープがでてきただけで教室が湧きますね。数学嫌いな子も興味深そうでした」
―学校教育としてはそういった工夫のある授業は増える傾向にあるの?
「学校の判断にもよりますが…ゆとり教育で“教えるべきこと”にかけられる時間が減ってカリキュラムに追われますよね。そうするとじっくり考えさせる授業は減ります。でも総合学習の時間に“選択数学”という授業を設定してレベルの高い子にはどんどん応用や工夫した授業を、できない子には入り口から丁寧に指導をしていくと、数学の授業は充実していくとも言えますね」
―それで生徒間のレベル差がひどくならない?
「そうなんですよ…ただ“中学で最低身につけるべきこと”を全員に定着させ、さらに適性のある子を伸ばして行くにはいい方法だと思います」
―まだ意地悪言うようやけど、その方法で入試は乗りきれると思う?
「結局この問題はそこに落ちつくんですよ。考える力や発想を鍛えても入試では今までと同じ解答を求めている。採点者の都合ばかり考えず、もっと解く過程や発想を見る入試になるべきですね」
うーむ、教師の卵恐るべし。予想よりずっと広い視野でモノを考えている。次回は「理想の教師像」についてバトル・トークをしてみたい。
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今読み直して思うのは、当時19ぐらいで私のところに来た彼が「絶対年齢ごまかしてるやろ」とみんなに疑われるほど大人びていたのを実感しました(笑)。それはともかく、私もいつも思うのは「受験は悪!進学塾は悪!」(特にトライのコンビニ弁当を塾の教室で食べるCMに悪意を感じますが)と咆えるのは簡単なのですが「じゃ、別の方法で本人に合った学校に入れてよ」という根本の部分を誰も解決できていないので、水掛け論にしかならない。
だから、私は「受験を楽しく乗り切って、タフな子どもを育てる」ことにベクトルを向けているわけです。それが正しいから、というより今の選択肢ではそれが教育効果として色んな意味で必要だから、としか言いようがありません。
次回、この続きを載せてみようと思います。この議論はしてもしたりないので、反論も含めてコメント歓迎です。学校の先生、塾の先生、学生、保護者の方などご意見があればお気軽に!
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