教育実習生とトークバトル(2)
今回も、教育実習生のT君(今は高校の先生です)とのトークバトルを掲載します。
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「理想の教師像」 大阪新聞 2001年10月掲載
前回に続き、教育実習を終えたばかりの数学講師、T君とのやりとりを収録してみたい。
―「理想の教師」に必要なものって何?
「『熱意』でしょう。授業の上手いヘタや知識があっても『熱意』が無ければ教師をやるべきじゃないと言ってもいい。でもその『熱意』の裏には自分の未熟さから来る『不安』が付きまとってます。教育実習中ずっと不安で、だからこそ必死で予習をしたし生徒を理解しようとしました」
―熱意があるからこそ「これでいいのか」を自問自答するから不安になるんやろね。十年同じノート見て授業して、同じギャグ言うてる先生ってあかんな(笑)。
「学校の先生にも熱意のある方はたくさんいます。ただ多忙過ぎますね。会議、行事などの繰り返しで教授技術を磨く時間もやる気も削がれますよ。今回実習に行って、『教師になる前に山ほど予習してストックしておこう!』と決意したほど(笑)」
―塾でも忙しい時期は一緒やね。新しいことに意欲が湧かない。「マンネリ」って教師にとって最大の敵やね。
「僕は塾講師になった当初、他の先生達がみんな熱心に教材を作っていたのに影響されました。だから職員室のムードって大事ですね。それと同じ実習生同士で飲みに行くと教育論だけで三軒行けた(笑)。普段本音で語る機会が減っているだけにとても貴重な機会でした。子どもに対するだけじゃなく教師同士のコミュケーション能力も必要だなぁ、と実感しました。みんなが話し合えば教育は変わっていく、と」
―そうやね。意見は交わすことで形になるし、先生同士が積極的に討論できる環境は大事やね。ところで、子どもに対する対応はどうするべきだと思う?
「上から物を言うのではなく、同じ土俵で何でも言ってもらえる環境を作り出すことかな」
―でもそれって“馴れ合い”と紙一重ちゃうの?秩序を乱す子に対して、きちんと当たれるやろか。
「確かに『嫌われるとやりにくくなる』という意識もあるし、注意するのは気を遣います。僕は親しまれるにしても、まずはきちんと授業能力や専門知識を磨いて生徒に信頼される教師になりたい。その上で親身になってくれる先生なら、言うことを聞く気になるはず」
―授業ヘタな先生って裏であだ名つけてバカにされてたりするからなぁ。
「井筒先生(私の旧姓)は、電車の中で態度の悪い高校生に注意できます?」
―刺されたりするご時世やから…言いたくても言わんな。あかんね、私も。
「僕もまだ注意できない自分が嫌です。善悪の線引きって難しくて、彼らの目の前で大人が同じことをしていたりすると、納得させる自信がまだない。でも“教育者”になる以上は努力します」
―私もがんばってみるわ。日本の教育を支えるええ先生になってな!
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3年前のトークバトルなのですが、あまり問題点となっている状況は変わらない気がします。塾でも学校でも「熱意ある教師」との出会いが鍵を握っている。しかし、その偶然に頼るだけでは難しい現状が、自衛の手段としての百ます計算を始めとした一連の「家庭学習指南本ブーム」だったのではないかと思います。
そういった自衛のノウハウを伝える意味もあってこのBlogやイベントをやっていますが、本音はT君のような熱血教師がどんどん育つことを祈っています。
また会う機会があれば、彼のその後の心境や現状なども聞いてみたいものです。
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「くろねこ国語塾」イベント授業での添削は、今お預かりしている分は来週に送付予定ですm(__)m
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コメント
先日はコメントをありがとうございました。
「T君」は、良い教師になりそうな感じがします。そのまま情熱を持って成長し続けて、「教え子に良い刺激を与える存在」になってもらいたいです。
人生は「良い師」に巡り会えるかどうかで随分変わると思います。
共感できる考え方をもった、例えば「T君」は、有名私立高校を職場にされたということですが、「良い教師」に出会う(確率を上げる)ためには、それなりの学校を目指さなければならないことになりますね。(子供に)頑張ってもらいます。
投稿: ばかぼん父 | 2004.08.08 09:56