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2004.12.09

日本の高校生の読解力低下

 まぁ、別に驚きはしないんですが予想していたようなニュースが流れていました。
「日本の高校生の学力低下~読解力も問題」

 私は小・中学生を教えていましたが、退職してからきちんと試験を受けて某予備校の現代文講師を1年ほどやっていました。京大・阪大理系コースのセンター現代文(浪人生)と高3の私大現代文を教えたのですが、ハッキリ言って楽しくはありません。

 小学生や中学生はちゃんとリアクションを返してくれますが、高校生にもなると「真面目に授業に出て参加する」という行為そのものにテレがあるようで反応が鈍いこと甚だしい。じゃあわかってるのかなと思いきや、「“自尊心”を外来語で言ってくれ」と当てると「“外来語”って何?」などと返ってきて驚愕したことも数知れず。おいおい18歳超してて理系クラス、しかも偏差値高いはずやのにどーなってんねんと疑問に思ったものです。

 ネットで高校生の書く文章なんかを読んでいると凄い子もいるし、一概に出会った子で判断できないにしても基本的な「語彙力」が足りなくなっている気もします。

 それ以上に、読解力は「ひと粘りする忍耐力」という側面があります。センター試験の現代文は、大学教授の書いた論文並みの難しさです。わからない言葉を知ってる語彙や漢字の意味、前後の関係からほどいていく「粘り」が無いと本当に読めるようにはならない。周りの人やコンピューターがさくっと答えを出してくれるような環境にいると、この「粘り」が無くなります。粘りながら読む訓練をしていると、だんだんと速くなり難しい文章が読めるようになってきます。

 また子どもの「粘り」=「読解力」が無い理由として、世の中総じて「感情」が先に立ちすぎている感じがします。世の中には感情論が溢れ、少し論理的に考えればさして問題でないことや解決するにはたった一つの方法しか無いことに、引きずり回され過ぎている。筋道立てて周りにも目を配りながら論理的に考えることを封印して「自分が快か不快か」だけで感情を撒き散らしていると、起こった出来事に対しての理解力・判断力が失われてしまいます。

 マスコミの力も強烈で、ニュースに感情論は不要なはずですが思考を止めるような音楽やキャスターのコメントで「悲劇」「感動」が作られています。それをよく考えずに吸い込んでしまうと、本当に思考力が無くなり読解力も同時に低下してしまいます。最終的にできるのは「少し待って意味を考える」読解力を失った人たちです。

 子どもなら周りの人が叱ればいいことですが、今は大人でもネットで悪感情を匿名で撒き散らせるので笑い事ではありません。(この辺は、小林よしのりがゴーマニズム宣言の最新刊でなかなか面白いことを書いていました。興味のある方は一読を。信奉者ではありませんが、一つの意見として読む価値はあるでしょう)社会全体が「理解力・読解力」を封印し始めているので、消費者に迎合する広告業界ひいてはマスコミは「アホでもわからなきゃ売れない」とばかりにレベルを落としていき、ますます日本に蔓延する言葉は稚拙なモノになっていくわけです。(マーケティングも仕事にしているので、私も加担していると言えばしています)

 もちろん、感情がダメというわけではありません。何かに感動する思いや「感性」を育てることは必要です。感性が枯れたら人間は終わりです。映画や音楽や本や日々の喜びに感情を揺すぶられて言葉に出すことも人間の特権です。その潤いを守ることと、思考停止の感情論だけで生きることは別モノです。
 
 偉そうに書きましたが、読解力の問題は学校や教育の問題だけじゃないと言いたかっただけです。だが商業主義に乗っかってるマスコミには期待できない。家庭や社会全体で意識的に鍛えることが必要。具体的な方法に関しては、「簡単に答えを出さない」習慣を作るということでしょうか。こういう点で、数学の困難な問題を解く子が国語に目覚めると凄いところがあります。もともと「頭の粘り」があるので、引っかかる言葉や文章を思考で突破してきます。

 ほんで、お前は何ができるねん、と聞かれたら「受験を通してタフな子どもを鍛える」手伝いをすることと答えるしかありません。論説文を読ませた後、時間に余裕があれば「自分の意見」を考えさせる。その意見の論理を組み立てさせる。説得力があれば褒める。判断基準が「好き・嫌い」だけであれば指摘する。そんなことの繰り返しを色んな形で続けていこうと思います。

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コメント

外来語って何?...,とのことですが,日本では,質問することができない風潮がありますね.どうしてかと考えますと,質問して答えられなかったら,恥をかかすことになってしまい.けしからん.これが,子供のころからずーと続いてきて,大学などでも,わからないはずなのに,質問をする学生の少ないこと.これも教官に質問して恥をかかせたらいかんという,学生の美徳のようなものではないでしょうか.それが高じると,学校自体に期待を抱けなくなり,教育そのものに,実利的なものばかりを求めるようになっているような気がします.
 読解力は,私も低いことを自覚しています.ただ,その場合,質問することで 何とか こうして生き残っております.
 長文・乱筆をお許しください.

投稿: lisa | 2004.12.12 20:50

書く申します,私の娘も高3で国立理系です.国語の成績が芳しくないので,浪人を勧めております.この1年間で,じっくりと粘り強く 読解に取り組むことを鍛える必要を感じております.

投稿: lisa | 2004.12.12 20:54

はじめまして。

質問に関してですが、確かに教室に緊張感がある先生だと質問しにくいですね。

ただ教師側から言えば質問されるのは基本的に歓迎なので、どんどんするように勧めています。

その一歩の勇気を出すのも教育だと思っています。娘さん、結果が出るといいですね!

投稿: とと | 2004.12.23 16:28

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