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2005.06.05

主観的VS客観的




 ご無沙汰しています。



 実は、国語塾とは全く別ジャンルで本の出版が決まったため、6月中は大変追われています。出来上がった本はおそらく、「国語教師のくせに」「ナンだこの言葉遣いと内容は」とお怒りになる方続出の本だと思いますので、また発売になってからこそっとご紹介します。すみません、モノ書いて生きていくというのはそういうことでもあるのですm(__)m

 

さて、語句の教え方で延び延びにしていた「主観的VS客観的」について書いてみたいと思います。



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 「今日覚えて帰ってほしいのは『主観的』と『客観的』という2つの言葉。対義語やからセットで覚えてな」

---《板書》------------


●「主観的」=自分の気持ちが入った見方
   ※主観の「主」は「主人」の主 (例)日記

  〔例文〕本を読んで主観的に考える。
    ↑

    ↓
●「客観的」=自分の気持ちを入れない見方
  ※客観の「客」は「お客様」の客 (例)新聞記事

  〔例文〕事件を客観的に調べる。


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 「ほんなら聴こうかな。主観の『主』はここに書いた通り『主人』の意味やと思えばいい。自分が主人になったものの見方や。『観』は『観察』とか観るって意味があるやろ。この『自分が主人になって観る』と、気持ちがむっちゃ入るわけよ。えーっとな、じゃあ『にんじん』について、思いつくことをどんどん言ってくれるかな。連想ゲームみたいな感じで」
※言わせていって黒板に書き出します。

---《板書》------------


 「にんじん」


 おいしい  オレンジ色  きらい
ウサギが食べる  野菜  ビタミンが多い

------------------


 「よしよし、この中でな『おいしい』と『きらい』に丸をつけてちょうだい。

にんじんを『おいしい』と思うのはその人の勝手やんか。世界中の人が『おいしい』って思う保証はないやろ。自分が主になってにんじんを見て出てきた言葉やな。それから『きらい』も同じ。『きらいやわー』と思う気持ちは、自分の気持ちに過ぎないから人に押し付けることもできないし、にんじんが好きな人に失礼やろ。

こういう『自分の気持ち』が入った見方を『主観的』って言うねん」


「たとえば、君らはよう先生のことを『オバさん』とか言うてくれるけど、それは君らの『主観』であって、先生は悪いけど自分のこと『イケてるお姉さん』と思ってるワケや。

それに君たちや先生の気持ちを全く無視して『25歳』は世間的には『オバさん』とちゃう。ナンなら、家の人に聞いてもらってもいい」
 ※25歳、校長になった時にはすでに「オバさん」呼ばわりされていました(涙)




「こういう『だれかの気持ち』を一切抜いた物の見方を『客観的』と言う。お客さんになった気持ちで、外から眺めるねんな。だから『にんじん』のところで出た『野菜』とか『ビタミンが多い』って言うのは、世界中の人に聞いても同じこと答えるはず。こういう『客観的』な物の見方が、大人になるにはむっちゃ必要やねん」


「例のところに『新聞記事』って書いてあるやろ。ある事件が起こった時に、新聞記者が勝手に『俺はコイツが犯人やと思う、きっと悪いヤツに違いない』って書いたら正しいニュースが伝わらない。阪神がボロ負けしたのに『今日は巨人がズルしたから阪神は負けてない』って思い込むのは勝手やけど、新聞に『阪神は10対0やけど負けてないって信じてる』って書いたらマズイやろ。

 だから『客観的』の代表例は新聞記事を書くときの物の見方。事実や起こったことだけを、ただ書く。絶対に書く人の気持ちを入れない」

「ところで、日記を書いてる人おるか?…何人かいるな。夏休みの宿題で絵日記を書くときなんかに『今日はUSJに行って、とても楽しかったです』と書く時には君たちの『主観』が入ってくるやろ。『疲れた』と思ったらそう書くし、『また行きたい』と思えばそう書く。日記ほど好きに書いていい文章は無いから、主観的な物の見方の例やねん」






「ほんで、最後に少し大事な話をしよう。まずはこの言葉を対義語として覚えることが大事。使い方としては、例文にあるように自分の気持ちを入れれば『主観的』入れない時は『客観的』。『主観的に考える』とか『客観的に判断する』とかそういう言葉とセットになって使われる」


「それで、使い方だけじゃなく、せっかくだからこの機会に『客観的』な物の見方も覚えてほしいねん。自分の『好き』『きらい』『楽しい』『楽しく無い』だけで物を考えるのはアホや。テレビ見て『このタレント嫌い』と思うレベルやったらええけど、身の周りの人にそれを簡単に使うなよ」



 「例えばな、K先生って最強に怖いって思ってる子いるやろ。確かに、怒ったら怖いし怪獣みたいな先生やけど『客観的』に考えてみぃ。塾って賢くなるために来てるんやろ。ほんでもって、K先生は君らをアホにしようと思って怒ってるんか?ちゃうやろ、宿題やらな賢くなれへんからやんか。でも君たちは『怖い』先生を嫌う。じゃあ、先生が今から『毎日授業は無しでーす。オヤツでも食べてゲームして漫画読んでていいよー』って優しくなったらどうなる?」



生徒「合格できへん」「アホになる」「先生ちゃうやん、そんなの」






 「そうやろ。ちょっとだけな、苦手な人とか科目とかでも『客観的』に考える――つまり、自分の気持ちをちょっと横において考えるクセをつけると、色んなことが見えてきてもう一つ賢くなれると思うで。じゃあ、今日はこの2つをバッチリ覚えて帰ってな」
  



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 これと合わせて「主体」「客体」を教えることもあります。子どもは「客観視をして分析し、冷静な判断をする能力」がまだ未発達なので、力が入ります。また、最近の報道はここで教えているほど、実は客観的でない側面もあり、テレビのバラエティめいた報道番組などの怖さを教えることもあります。


 私自身も、主観で人やモノを判断して切って捨てたい瞬間も多くありますが、踏みとどまって判断して動いた方が後悔しないような気がします。要するに「感情」だけで処理しないで、頭を使って相手の立場や別の視点で考える。




 教師はどんな子どもであっても、「主観」を排除して分析することが求められているので、自ずと鍛えられる日々でした。「この子は~だ」と主観で決め付けた瞬間に、その子の可能性を発見できなくなってしまう。「客観性」というのは、大人や教師こそが向き合うべき視点だと思っています。





 ただ、趣味や好きなものに主観を炸裂させるのも愛すべき美質なので、両方の視点を教えて認めてやりたいものです。子どもが延々と自分の好きなものについてしゃべってるのを聴くの、楽しいですよ。鉄道とかジャニーズJrとか遊戯王カードとか(笑)




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 ◆くろねこ@国語塾:厳選バックナンバーはこちら
  http://www.kikaku-ya.net/kuroneko/study.htm
 更新停滞しがちですが、お許し下さいm(__)m

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コメント

非常に勉強になるホームページですね。これからちょくちょくのぞかせていただきます。自分が小さいときにこんな事を教えてくれる先生がいたら、もう少し賢い大人になれたかも?なんて考えてしまいました。

投稿: スターウォーズ好き | 2005.06.12 15:03

スターウォーズ好き様

お返事大変遅くなりました。
せっかく書き込んでいただいても、更新がのんびりなのですみません。

世の中の真理をどうやって混ぜ込んで教えるか、苦労していました。お役に立てれば幸いです。

投稿: クロネコとと | 2005.08.04 02:56

こんばんは!
通りすがりです。
客観的について調べてたらここにたどり着きました。

とても、ためになりました。
ありがとうございました。

投稿: 通りすがり | 2008.05.19 23:10

通りすがりさん

>とても、ためになりました。

かなり前の記事ですが、お役に立ててよかったです!

わざわざコメントありがとうございました!

投稿: クロネコとと | 2008.06.04 19:32

初めまして。くろねこ先生。(我が家ではこう呼ばせてもらっています。すみません。)
現在小5の息子、年中組の娘を持つ母です。この3ヶ月、息子の「国語わからん!」のあまりにしつこい呻きに悩んでいて”学びの森”のレポートからここへたどり着きました。

「主観VS客観」、「具体的VS抽象的」の実況中継、「読解問題、線引きのツボ」には、今、正に我が子に欲しい内容が書かれてあり、私自身もこのような進め方があるのかと目から鱗が落ちる思いでした。私の小中学生時代を思い返してもこんなに面白く、かつ明確に言葉の内容、設問のツボを示してくれた人はいなかった・・・と思います。ですから、「主観VS客観」、「具体的VS抽象的」に対する認識はフィーリングに頼った理解でした。あの時代に「くろねこ先生」がいて下さったら、もっと楽しかったのに。と、このブログを読んだ最初の感想でした。(私のほうが、ずっと年上であるのに、厚かましいですが。)

これまで私は、親子双方に悪影響が大きく、親子関係を悪くすると思っていたので、始めからわが子に勉強を教えることは拒否し、「勉強は学校と塾の先生に教えてもらいなさい」、と言ってきました。

息子は父親の意向で、現在私立小学校に通い、中学受験ために小3から大手の進学塾に通っています。小学校はとても快適らしく息子の性格にあっていて、もともとお受験に反対だった私も一緒に幼児教室に電車を乗り継ぎ通った甲斐があったものだと思っています。

もともとスロースターターの息子は、小3時は塾の流れに慣れることに精一杯、小4時では、ベテラン算数講師に出会い、細かく声かけをしてもらったことで算数に自信を持てるまでになり、算数に限っては自分の弱点がわかるところまで精神的にも成長してきたと思います。
でも、国語に関しては、息子が幼児の頃から「言葉」に対する反応に疑問を抱くことが時折あり、ずっと心配していました。
小3くらいからやっと「怪傑ゾロリシリーズ」を読めるようになり、自分の興味の範囲でようやく「本」に親しむようになりました。

しかし、進学塾の国語のテキストはそんなものでは話になりません。小5になって、本人は「さらに頑張ろう!」という受験生としての芽生えの気持ちと、問題文を読んでも、何について書いてあるかも満足に答えられない自分との板ばさみで学習全般に意欲をなくしかけていました。

ここで、受験をあきらめさせることは、我が家では、息子に「父親から見捨てられる」意識を植え付けることになるのです。
これではいけないことは、私も勿論わかってはいましたが、私に誤解を生まない解説ができる自信は毛頭ないので、国語専門塾に通わせるべきか、とても悩んでいました。
時間とストレスの問題もあり、ほんとにすがる思いでネットを探しまくりました。

「ここ」にありました。私の先生がここに見つかりました。
くろねこ先生の実況中継を真似て、嫌がる息子を無理やり座らせ、やってみました。
息子には、「お母さんなあ、国語のめっちゃええ先生見つけたわ。インターネットの中のくろねこ先生って言うねん。インターネットの中やから、直接あんたが教わることは今でけへんから、お母さんが教わったことをしゃべるで。よう聞いてな。」と。
「主観VS客観」、「具体的VS抽象的」から始まって、大まかながらも、線引きまで。
ちょうどテキストで論説文をやっていたのでそれに体当たりしてみました。
案外、自分でも面白く、久しぶりに熱くなりました。
途中、息子が、「あっ!それ、4年の時の先生言うてた!この設問すっごいヒントやん!」と叫んだときは、こっちも「しめた!」と思い、自信たっぷりに「そうやろ?先生もちゃんと言うてくれてんねんから、覚えといてな。」なんて偉そうに言ったりして、楽しかったです。

くろねこ先生にここで出会えてから、3回こんなレッスンをしました。
息子も現金なもので、あんなに「国語嫌い!」と塾の先生にも言っていたのに、2日前には「今、国語が一番おもしろい」なんて先生に言ってるのを聞いてしまい、密かにほくそ笑んでしまいました。

あ~、なんか私のこの感動を伝えたいために、初めてなのに、気がつけばこんなに長いしょうもないコメントになってしまいすすみません。

本当に、ありがとうございました。
子ども以上に私も救われた思いです。
これからも、どんどん学びたい気持ちになりました。
まだまだ受験勉強は始まったばかりです。
できるだけ長くここにお世話になりたいと思います。
よろしくお願いします。

投稿: KURI | 2009.05.25 19:51

KURIさん

お返事遅くなりました。
くろねこ先生です(笑)

とても嬉しい熱いメッセージをありがとうございます。こうして書いておいて、本当に良かったと思いました。

あちこち、お返事したいところはあるのですが、何にしても


>小5になって、本人は「さらに頑張ろう!」という受験生としての芽生えの気持ちと、問題文を読んでも、何について書いてあるかも満足に答えられない自分との板ばさみで学習全般に意欲をなくしかけていました。


あの面白くない文章の数々、結局はそれが入試に出るので仕方ないですよね。だから「こんなん、お父さんやお母さんでも知らんへんでー家に帰って説明できるように、がんばって読もうなー」と言いながら、内容をほぐしていました。

 語彙力が増えると、自ずと読めてくる部分もありますし、よく出てくる題材は社会や理科の勉強と絡めて教えるのも一つですね。


>案外、自分でも面白く、久しぶりに熱くなりました。

これが一番のお薬ではないかと思います。親が一緒になって面白がって解く、間違えてもいいから文章に取り組んで、最後に感想を言い合ったりするだけで、子どもはめちゃくちゃモチベーションが上がると思います。

>「今、国語が一番おもしろい」なんて先生に言ってるのを聞いてしまい、密かにほくそ笑んでしまいました。

私まで微笑んでしまいました。
嬉しいですねー


>あ~、なんか私のこの感動を伝えたいために、初めてなのに、気がつけばこんなに長いしょうもないコメントになってしまいすすみません。

いえいえ、とても嬉しかったし、自分でも発見がありました。

悩んだら、またコメントなりメールなりでお気軽にご相談下さい。

応援しています!

投稿: クロネコとと | 2009.06.08 01:56

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