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2005.09.24

塾教師の観る「女王の教室」

「女王の教室」最終回まで観ました。
「良くも悪くもファンタジー」であるという感想に変わりは無いのですが、1点だけ教師モノとして大きなポイントがありました。

 

それは「教師として意識を誰に向けるか」です。

 

 真矢が「良い先生と思われなくていい、大事なのは一人一人の子どもだ、そのためには悪者になる」というポリシーを貫き、泣きじゃくる子ども達に「いつまで感傷に浸ってるの?中学に行きなさい!」と言い放って去っていく背中。(その前の「仰げば尊し」で涙を堪えていたのがツボでしたが)あのシーンを見て、2人の教師を思い出しました。

 

 塾にも卒業式というか、合格のお祝いの会があります。受験が終わった子ども達は塾でお菓子を食べたり、ゲームをしたりします。私が非常勤で行っていた塾の会で、最後の方に先生が一人一人お別れの言葉を言う場面がありました。その時、1年前にその校舎に配属されていた教師がやってきました。つまり、塾を今日で出て行く子ども達が5年生の時に習った教師です。

 

 正直なところ、1年間最後の仕上げをした科目の教師を差し置いて、子ども達にギャグを飛ばして人気ぶりをアピールしており「なんだコイツ」と不愉快でした。そして彼の別れの言葉は「また塾にいつでもおいで、街で会ったら声をかけて」というものでした。内心「あんた、普段この校舎にいないじゃん」とツッコんでたのですが、その後に別の先生が言った言葉の強烈さにびっくりしました。

 

 「2度と塾に来るな」

 

 ……さっきの教師の話を子ども達の前でひっくり返す是非はともかく、その後に続く彼の言葉に「教師とは何か」と考えさせられました。「中学に行ったら、その中で新しい友達もできる。新しい先生にも出会える。いつまでも振り返ったり、懐かしんでいてはダメだ。もう受験は終わった。教えることはもうない。新しい環境でどんどん成長しろ。止まるな」

 

 私は常々思っています。教師の仕事は「自分を超える人材を育てる仕事」です。自分以下の人間しか育てられない、育てようとしない教師は、2流。自分がいい教師と呼ばれることに、人気者であることに快感を覚えることにベクトルが向くと、表面上は生徒ウケしていても何も成果を出せない教師ができてしまいます。それが「いつでも塾においで」と言った教師なのでしょう。塾が生徒の拠り所であったのならなおさら、本当は自立させないといけない。

 

 そういう意味で「女王の教室」の「教師のベクトルは自分の人気でも無く、保護者でも無く、ましてや教育委員会でもなく、目の前にいる子どもだけだ」というアピールは、ごく真っ当でした。そりゃーやり過ぎ感は満載ですし子ども達の豹変振りは腑に落ちませんが、台詞の随所に光るものがありました。

 

 もう一つ、「公立にこそ教師の醍醐味がある」という台詞が印象的でした。私も「経済格差を教育格差にしない」ための自衛の手段を、塾の現場から伝えていきたいと思います。

 

 余談:個人的には篠井英介が最後に出てこなかったのが残念。授業参観で突如場をさらった、真矢とのギャップが最高でした。

 

 

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コメント

ワタシも都内で塾の講師をしています
どうしても私立を進めてしまうのですが
(親の意向も汲まないといけないので)
本当であれば
公立が一番であるような
流れが出来ることがいいなと思っています

投稿: いずみ | 2005.09.25 11:51

テレビは観ないので(ってカッコつけてるわけじゃないのですが、あまり今日をそそるものがないので)、女王の教室もまったく見ていないのですが、クロネコととさんの相反する2人の先生のお話、ぐっときました。なるほどーですね。広くて長い道が続いていることを指し示してあげなければ、親も。

投稿: でぼら | 2005.09.29 19:06

いずみさん

>公立が一番であるような
>流れが出来ることがいいなと思っています

そうですね。だからと言って中高一貫の公立なんぞは塾に入らないと受からない難度になっていることも多く、難しい問題がありますよね。

いい意味で色んな子どもがいて、最低限の「学び方」を身につけられる公教育に期待したいです。

>でぼらさん

>広くて長い道が続いていることを指し示してあげなければ、親も。

いい言葉ですね。私はそういう意味でも、親自身が自分の人生を楽しむべきだと思ってます。自分の親のカッコいい顔を見てきた子どもは、オトナになることを楽しみにするようになります。子どもと同じように、親の前にも、まだ広くて長い道は続いているんですよね。

だから何かを卒業して次のステップに行くという時は、どんと背中を押してやりたいです。

投稿: クロネコとと | 2005.10.02 00:24

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