事件に関する記事について
本日発売の「YOMIURI WEEKLY」に、今までコメントなどで協力させていただいていたご縁で頼まれ、今回の京進での事件について取材を受けました。
雑誌を読んで、ここに来られた方もいらっしゃると思います。
私は内情暴露をするために、取材に答えたのではありません。当時、現場にいた時から疑問に思っていたこと、声にしてきたことをただ繰り返したに過ぎません。
現在、京進に通わせている保護者の方で不安になった方もいると思いますが、京進の各校には情熱的で思いやりある教師が多くいます。これはかつての身贔屓ではなく、私の塾講師の入り口が京進であり、かつ他塾を見て自信を持って言えることです。今回の事件で、信頼回復と合格のために必死で努力している様子も伝わってきます。
まずは、信頼して目の前の入試を突破していただければと思います。受験直前だから「少しでも忘れさせて、集中させてあげたい」という気持ちは重々わかります。だからこそ京進もやむなく授業を再開しているのだと思います。
ただ、本当なら一緒に受験を乗り越えたはずの一人の少女がいなくなってしまったこと、その重みだけは受験が終わった後にでもお子さんと話し合ってほしいと思うのです。「無かったこと」にして、人の死に無感動な子どもになることは、受験で失敗することより大事なものが抜け落ちることです。
外部からのいい加減な言葉に読めるかもしれませんが、私は本当に「忘れてはならない」と思うのです。
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それから、塾関係者の方たちへ、記事の補足です。
私は「営業と教育という相容れないものの両立」に関して議論を重ねるべき、という結論で記事を締めくくっています。紙面の都合で短くしましたが、もう少し具体的な案を盛り込めればより伝わるかと思います。
私は小さな会社の経営者です。
シアター関係の事業で起業し、広報代行やコンサルティング・ビジネスセミナー講師やライターとしての活動をメインの事業としています。教育をあえて仕事にせず、旧姓で非常勤講師を続けているのは、集客の難しさを知っているからです。
社員は雇っていませんが、売り上げが伸びなければ会社は潰れます。起業して数年、何度も危機に瀕して来ました。その経験の上で、モットーにしていることがあります。
「顧客の期待値を超える仕事をする」
相手の期待値を読んで、それ以上の仕事で返す。そうすると、顧客は満足し、リピートしてくれる。塾の現場での「営業」は、販促活動や営業トークも大事なのですが、まずは「親の期待を超える対応、生徒の期待を超える授業」だと思うのです。確かに、保護者の要望や生徒のわがままに振り回されるケースもあります。それでも圧倒的な商品やサービスには、良質な顧客が育っていきます。
相手の期待値を超えられない商品を、ましてや満たしてもいない商品を、販促宣伝の力だけで売りさばこうとしても無理があります。
経営者やリーダーは「どのような体制にすれば、品質を維持できるのか、顧客満足度を上げることができるのか」に必死で取り組むべきです。「教育でお金を稼ぐ」ことは、決して間違ったことではありません。確かなニーズがある。それに答える商品を提供する、そして対価をもらう。
塾は、その上に「生徒や保護者との交流」や「自分の生徒が成長する喜び」まで得られる、幸福な仕事だと私は考えています。
ただ、忘れてはいけないと思うのです。
塾の生命線は「授業」「子どものモチベーションアップ」「1人でできる力の養成」。
その商品の質が落ちることがわかっていて、安易な出店や無理な集客はしない方がいい。どんなビジネスでも同じことです。
人を雇い、教室を開いてしまうと「生きるため」に利益を生み続けなければなりません。それはごく当然の経営活動です。そこで私たちが売っているのが「教育」という大変デリケートなものであることを忘れると、小さな塾なら「毎月の資金繰り」、大きな塾なら「経営目標」に目がくらみ、どこかで歪みが生じます。
その歪みは、真っ先に「現場」に現れます。上層部は、現場の声が不平不満だけに聴こえているようではいけないのです。現場が疲弊し、会社本体への信頼を失えば自ずとサービスの質も落ちていきます。この機会に、商品の質とそれを維持する体制作りを再検討してほしい。現場が授業や保護者対応に集中できる仕組みを。
そして同時に「うちはこういう方針の塾です」と自信を持って、それぞれの塾がよりスタンスを明確にすることが、消費者の選択肢を増やし「顧客との相思相愛の関係」を作りやすいのではないかと思います。
過当競争だからこそ、各塾の差別化・個性化を図ることが互いの生き残りの道です。
子どもの性格や保護者の要望も多様化しています。
それに答えるために個別指導が爆発的に普及しましたが、その個別指導の中でもまた差別化をしていく必要がある。もちろん、進学塾も補習塾も。
例えば、私が塾を作るならば非常に厳しい塾を作りたい。
あいさつ、課題に対する取り組み、授業態度、教師や友人に対する接し方。
以前、茶髪にしてきた中学生を注意したら保護者に「学校ではええのに、なんで金払って叱られなあかんの」と辞められてしまった経験があります。その時、私は「これがウチのルールだ!」と示した上で、納得して入ってもらえる仕組みが欲しい、とつくづく思いました。
もちろん、生徒には気が弱く厳しい塾が合わないケースもあります。そういった生徒に向けて、コーチングのプログラムを取り入れた、楽な気持ちで通える塾もあってもいいと思います。
最初から確固とした「塾の方針」を掲げる。それに賛同してもらえない消費者を無理に入れない。
…そんなの夢物語、採算なんて取れない。
綺麗事を言うな、少子化の中で生徒を奪い合わなければ勝てない。
そういうシビアな現場の状況も、私なりに知っている上であえて提言したいのです。
ヤマト運輸の小倉昌男元会長の言葉を、引用しておきます。
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宅急便を考えたとき、単なる一企業の事業ではなく、社会的なインフラになるし、そうしたいと思っていた。思い上がったことだったかもしれないが、それは私の「志」だった。私は経営者に必要なのは「志」だと思っている。
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「塾で楽に儲かる」は、幻想です。そんな幻想でやっている塾は、強いスタンスを持つ塾や商品力のある塾の前に、おそらく淘汰されていくでしょう。
FCで取り組むにしても熱い「志」を持たなければ、子どもはついてきません。
地域に居場所を探している子ども達がいる。子どもを伸ばしてほしいと願う保護者がいる。それにどんなスタンスで答えることができるか。それを明確にし、自分の塾の方針に合わない生徒には他の居場所を提案する。
そうして「公教育の穴」がそれぞれの「志」を持った家庭教師会社、塾、フリースクールや専門学校などで細かく埋め尽くされ、ドロップアウトする「基礎学力がつかないまま放置される」子ども達が少しでもいなくなればいい、と願っています。
まだ講師研修のやり方など、書きたいことはたくさんありますが、今回はここで終わっておきます。
記事を読んでのご意見もあると思います。
私の過去を知る人からのクレームもあるかもしれません。
私は完璧な教師でも、完璧な人間でもありません。厳しく当たった生徒もたくさんいますし、叩けば人並みの埃も出ます。ただ実名で取材を受けた以上は、責任を持って臨んでいるつもりです。
また「教育と言いながら別の事業をやってるじゃないか」という批判もいただきますが、上記の理由で「安定した品質での提供」を実施できる体力の無いまま、教育事業に取り組む予定はありません。せめて今できる「書く」「話す」ことで、提案し続けていくつもりです。ご理解いただければ幸いです。
色んな立場からのご意見を、積極的に受けたいと思っています。
>>コメント欄、トラックバック、メールでぜひお聞かせください。
この事件を、決して一過性の悲劇で終わらせないために。
そして、ありきたりな言葉でしか綴れないのが大変もどかしいのですが、紗也乃さんのご冥福を、心からお祈りいたします。


Comments
こんばんは。
僕の店の患者さんにも塾で働いている人がいます。
その人に事件のことを聞くと「ホントに迷惑な話だ!」と怒っていました。
ホントにそうだと思います。
例えば私と同じ整体屋で同じような事件が起きれば患者さんは動揺します。
そこでサービス業とはなんぞや?ということを社会全体で考える必要があると思うのです。
サービス業をするからには人を幸せにしなければならない。
時給がいいから、楽だから、マニュアルがあるから、等という理由からこの仕事を選んでほしくない。
仕事って難しいものなんだから・・・
Posted by: ちゃぎぃ | 2005.12.28 at 01:50 AM
年が明け、明日からは冬期講習後半がスタートします。
私が授業をしている個別指導塾では、事件後、
教室担当社員からの一分程の話が一回と
紙っぺらが一枚掲示されただけで、
その他対応があるようには今のところ見てとれません。
小学生が一人で勝手にブース(教室)に篭っていても
社員が知らない、注意しない。
もちろん、自分のいる塾で事件など
起こらないと思いたい気持ちはありますが、
講師だけでも60名を超える校舎です。
関係者以外が出入りしても全く把握できません。
せめて、見回りを強化して欲しいと訴えてはいますが、
ご存知の冬期講習の忙しさ。
まったく取り合ってはもらえません。
私ができる範囲で見回り・声掛けをしている状況です。
今すぐの改善は望めないかもしれませんが、
出来る限り働きかけていかなければと思います。
「顧客の期待値を超える仕事」
そうですね、それが顧客満足ということだと思います。
冬講前に「顧客満足」という言葉は校長からありましたが、
その内容については話されず、残念でした。
(校長の考えを聞きたかったから。)
顧客=生徒+保護者
中学受験まであと一ヶ月を切りました。
一つ一つの仕事が期待値を超えるよう励みます。
Posted by: ya | 2006.01.02 at 05:19 PM
ちゃぎいさん
コメントありがとうございます。
>例えば私と同じ整体屋で同じような事件が起きれば患者さんは動揺します。
そうですね。業界全体が議論の対象になることは免れません。
>そこでサービス業とはなんぞや?ということを社会全体で考える必要があると思うのです。
業種によって異なると思うのですが、お客様のワガママに振り回されると秩序が保てない塾のような業種もあるし、徹底的に個別のケアを行うエステのような業種もあるし…それぞれの業界で「何を求められているのか」を考える必要があると思います。
>仕事って難しいものなんだから・・・
私も同感です。
難しい中に喜びを感じる、そんな仕事をしていきたいと思っています。
Posted by: クロネコとと | 2006.01.12 at 01:22 PM
yoさん
現場からのメッセージ、ありがとうございます。
>もちろん、自分のいる塾で事件など
起こらないと思いたい気持ちはありますが、
講師だけでも60名を超える校舎です。
関係者以外が出入りしても全く把握できません。
個別の怖さというのもありますね。年齢層が幅広いので、高校生と小学生でトラブルが起きる可能性も0ではない。そうなると、目配りは一層必要ではないかと思います。
>中学受験まであと一ヶ月を切りました。
一つ一つの仕事が期待値を超えるよう励みます。
自分自身の仕事が期待値を超えること、そして言いにくいかとは思いますが校舎や塾全体が良くなるように、提言し続けていくことは決して悪いことではありません。
私も相当イヤがられましたが、疑問は解消すべきだと思っています。ただ辞めて思うのは「もっと巧い言い方ややり方があっただろうに」と反省する面もあります。
今後もぜひ、がんばってください!
Posted by: クロネコとと | 2006.01.12 at 01:26 PM