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2006.02.21

「わたしが一番きれいだったとき」

 茨木のり子さんの訃報に接した日、奇しくも期末テスト対策の範囲にこの詩が入っていた。

 
  「わたしが一番きれいだったとき」日本は戦争で、青春と女の子らしいオシャレや恋を奪われた詩人は、ひととおり憤った後で、こう宣言する。
  

  だから決めた できれば長生きすることに
  年とってから凄く美しい絵を描いた
  フランスのルオー爺さんのように
                    ね


 最後の連を解説しながら「ご冥福を祈る」ではなく、
 「長生きできておめでとう」という言葉で胸がいっぱいになった。

 私が立ち止まる時間の一番長い、彼女の言葉。


 「死こそ常態
  生はいとしき蜃気楼と」

                    (「さくら」より) 


 長い長い時間の中で、自分は何を残せるのだろう?
 そして「生の希少性」を、子ども達にどう伝えることができるのだろう?

 茨木のり子の詩には、「今を生きる」ことへの問いが詰まっている。
 言葉の一つ一つが、日常に麻痺していた感覚を叩き起こしてくれる。

 「死こそ常態

 たまたま与えられた、生きているこの人生を何に使うべきか。
 ぐずって拗ねてる場合じゃない、といつも思う。

 「あたしも強くなろうっと!」
      (「女の子のマーチ」より)


 そんな強い言葉を吐きながらも「弱さ」への目配りも忘れない、懐の深さ。
 

 「落ちこぼれ
     和菓子の名につけたいようなやさしさ」

                (「落ちこぼれ」より)

 

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 装丁も愛らしいので、この詩集がお勧めです。 
 「おんなのことば」 茨木のり子/童話屋

 また、彼女がいかに日本語と詩の世界を愛していたかは、「詩のこころを読む」(茨木のり子/岩波ジュニア新書)で堪能できます。日本語の名手による、名解説。入試頻出なので知られた書籍ではありますが、たまには親の方が受験や子どもの教育から離れて、読んでほしい1冊です。


 こういう詩がすっと心に入らない、今の子どもの感性と語彙力を思うと、焦燥感が湧き上がってます。

 「あらゆる仕事
  すべてのいい仕事の核には
  震える弱いアンテナが隠されている きっと……」

                  (「汲むーY.Yにー」より)

 
 私のアンテナが鈍ってないか、彼女の詩に向かうと考えさせられます。これからもよろしくお願いします、と言わせる力のある言葉の数々。

 彼女の生が残した「いとしき蜃気楼」は、読む人の心に焼き付いて、鮮やかです。


 

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コメント

TB頂戴しましたん
ほんとに・・・素晴らしい詩人さんでした
合掌

投稿: 弥々 | 2006.02.25 09:01

YOMIURI WEEKLYでこのサイトを見かけました。
以前、同じ会社に勤めていました。

蜃気楼ですか。
そんなものかもしれませんね。
たかが、されど、ですかね。

詩集、読んでみます。


投稿: 小尾 | 2006.03.14 00:39

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2月19日 茨木のり子さんの逝去日に吾の志とも言うべき詩『自分の感受性くらい』を朗読させて頂いたもっともっと茨木さんの世界に浸っていたいから・・・昨日は『汲む』を朗読シリーズ三巻目はこの詩を語りまする*いつものように下記下線のタイトルをポチッとしていただく...... [続きを読む]

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