強制力というスキル
◆過去日記より(2003年ごろ)
昨日の日記に書いた男の子は、私が塾に着くと飛んできた。
「オレ、やってきたで!漢字のテスト勉強も、朝もう一度書いてきた!」と意気揚々と報告してくれた。
もちろん、クラスメイトも「先生、○○は宿題やってきたで!」「よかった~」と声を挙げている。本人もまるで100点でも取ったかのようにご機嫌だ。子どもの性格にもよるが「注目される」ことが刺激になるタイプの生徒には効く方法だ(萎縮するタイプの子には向かない)。
…しかし、漢字テストはカンニングをしなくなると、あっという間に悲惨な結果に。他の男の子達も私が「カンニングするぐらいなら、悪い点を取ってくれ。それは恥ずかしいことじゃない!」といって聞かせたら、堂々と100点満点のテストで8点を取ったりする。
これで第一段階の「カンニングからの脱皮」をクリア。
次は「実力で漢字テストで点を取る」ことに向かわせる。
今回はやんちゃ坊主ばかりが揃ったので「漢字できないブラザーズ」を結成、全員が60点以上を取るまで「漢字強化キャンペーン」が続くことになった。こういうのはただネーミングだけなんだけど、「オレも入りたい!」と大喜びする(アホか)。この「漢字できない」というネガティブワードは、クラスや相手に応じて「漢字やるやるブラザーズ」などと名前を変えることもあるが、基本的には男女問わずに平気で使うようにしている。
だって「君たちは人間としてはブラボーでも、漢字テストはダメダメです」というのは容赦ない事実。それは子どもも自覚している。「漢字がんばる隊」なとど青臭い名前をつけるぐらいなら、前者の「人間性や可能性を絶対に否定しない」というルールの下に、率直なウソのない言葉をぶつけた方が子どもはまっすぐな反応を示す。そして「カッコ悪いから勉強しよ」と思ってくれる。
ただ、クラスには密かに悪い点を取ってる大人しい女の子もいる。そういう場合は本人にわかるようにだけ、帰り際にそっと肩を叩いて「どうしたん、勉強する時間無い?」と聞いてやる。おとなしい子は首を振るかうなずくかしかしないので、「イエス・ノー」で答えられる質問しか最初のうちは投げない。勉強の仕方を指示して、「少しずつがんばろな」と声を掛けて帰らせる。
それから、できる子もちゃんと見せ場を作ってあげる。
「今日満点やった子手挙げて~」と手を挙げさせて、「○○さん、漢字できないブラザーズにどうやって勉強してるのか教えてやって~」と言うと、恥ずかしそうに「休みの日に一回書いて、前の日に3回書いて覚える…」と答える。
ブラザーズは「オレ1回しか書いてへんわ~」「すげー」などと騒ぎながら、ちゃんとできる子を認める。がんばって勉強してきた子は自信につながる。
こういった生徒対応法はマニュアルにしても意味の無いものだ。
何だろう、呼吸みたいなものである。
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勉強や暗記は辛いもの。だからこそ「心と頭で納得して勉強してもらう」のが一番いいとは言え、やりたくないものを「何がなんでも宿題としてやってこさせる」強制力も必要だと思っています。小テストの勉強も同じく。
振り返ってみると、小テストや宿題に厳しい教科の方が安定した成績だったのではないでしょうか?。甘い教師の科目は、自ずと暗記に緩みが出ます。校長時代、先生の授業アンケートで「楽しい」「面白い」のコメントが多い教師はいつも警戒していました。「厳しいけど面白い」なら安心です。子どもにとっての「人気教師」は「甘くてやさしい先生」「授業中に余談ばっかりしてる先生」のことも多いのです。
「強制力」を、いかに子どもの成長度合いやクラスの雰囲気に合わせて発揮するか。
塾講師のスキルとして重要なポイントだと思っています。
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