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2006.11.25

私が死ななかった理由。

今、発売中の「読売ウィークリー」の「いじめ総特集」でコメントが掲載されました。
 
 これはたまたま編集部ブログでいじめ体験談を募集していたので、自分が小学校の時に受けたいじめについて送ってみたものです。

 掲載は短いコメントになってしまいましたので、もう少し丁寧にいじめ体験について書いてみようと思います。
長文です。


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 私が一番ひどいいじめを受けたのは、小学校5~6年の在籍クラスでした。

 そのクラスでは、給食を好きな人たちでグループになって食べることになっていました。私が入っていたグループは7人。そのうち発言力のある4人の機嫌で、残りの3人の誰かが常にいじめのターゲットになっていました。それはある日突然です。「○○無視しよ」というリーダー格の子の一言。

 昨日まで無視されていた子も、チームに復帰できるので参加せざるを得ません。昨日まで同じように無視されていたというのに、次の獲物の「おはよう」に聞こえないふりをするのです。

わざと残りの6人ではしゃいだり、同じシールを分け合ったり。
その間、ターゲットになった子は輪の外で複雑な顔をしてなければなりません。
教師は誰も、この状況に気づいてくれない。


なぜなら、彼女達は巧妙だから。


給食の時間、ターゲットが離れて食事をしていれば、当然先生に怪しまれます。
そこで、給食の時間には「はよ来(こ)やー」と呼び寄せるのです。
その時だけ。先生の視線を意識しながら。

…でも食事の時間の話題には一切入れてもらえない


先生にいじめを訴えるにしても、7人の中だけのことです。
そしてじっと我慢していれば、いつかまたターゲットが替わる。

そう思って耐えていました。


===============

しかし、それではすみませんでした。
ターゲットになる頻度が高かった私は、あるきっかけでクラス全員にいじめられるようになりました。

それは本当にくだらないことです。
私の右頬には、ほくろが4つほどあります。
そして、右目の中にもほくろがあります。

リーダー格のMという女の子が言いだしました。
「イヅツってほくろ多い~これから『ほくろ』って呼ぼう

ね、くだらないでしょ。
33歳にもなって振りかえってみると、お前らアホか、と思います。

でも、クラス中にあっという間に波及しました。
私の右側の頬を見て数を数える男子。
「ほくろ、オレの机さわんな!黒くなるやろ!」と追い払う男子。
席順表の私の場所は、黒く塗りつぶされました。

女子でおとなしめの子だけ、少し遠慮して私を「ほくちゃん」と呼びました。


担任は、きっと「愛称」だと思ったのでしょう。
男勝りの、オバちゃん教師でした。


「ほくろ、ちょっとコレ職員室まで持ってきて」

教室はどっと沸きました。
私を「ほくろ」と呼んでけなすことは公認されたのです。


「ほくろに触ると黒くなる」(つくづく書いててアホらしい)

そう言って、男子は私を毛嫌いするようになりました。
避けて通る。手渡しプリントをグチャグチャにして捨てる。

修学旅行などで男女一緒のグループを作る時、私を擁していると人気のある男子グループと一緒になれない。そこで女子7人チーム内での私の排除も激しくなりました。家庭科の準備室に呼び出され、イスに縛られ「ほくろを消毒してやる」(できるかぁぁっ!!)と頭から塩コショウをかけられました。

髪を伸ばしていてお嬢様風の格好をした、男子に人気のあるKという女の子も、信じられないぐらい意地悪な顔ができるのです。平気で私の家に遊びに来て、おやつをたくさん出させて、私の母親にはニコニコしてみせる裏で。


今でも忘れない、辛い午後があります。
その日は、珍しく7人組のリーダー格・Mの家に呼ばれました。

「みんなで遊ぼう。3時に来てね」

嬉しくって、うれしくって、おやつを持って出かけました。


 ピンポン、とベルを押します。

 くすくすくす…

 中から、笑い声は聞こえます。
 でも、だれも出てきません。


 変だな、いるのに。

 またピンポン、と鳴らします。
 くすくす。

 「こんにちは!」とドアを叩きます。
 くすくすくすくす…

 決して、だれも、出てきません。


 Mの家は一階でした。窓側の方で「来たんだけど…いるんでしょ?」と声を掛けました。人の気配がします。でも、窓を開けて招き入れてはくれません。ずーーーーっと。

 何時間経ったか覚えていません。
 半泣きで「もう帰る!」と窓に叫んで、帰ろうとしたその時。

 後ろで窓の開く音がし、いつものリーダー達が顔を出しました。


 「もーずーっと待っとったのにー。何で来んのー」※名古屋弁

 ケラケラ笑って、私に声を掛けました。


 彼女たちに向かって「ずっといたくせに!何度もピンポンした!」と泣いて怒れば怒るほど、顔を見合わせてゲラゲラ笑い、あげくに「嘘つくな、ほくろ!」とののしられた。いたのに。何度も何度も呼んだのに。

 …死にたかった。
 


 これだけじゃない。

 物を盗まれた日。教科書に落書きされた日。グループ内でこっそり打ち明けた好きな人をクラス中にバラされ、当の男子に蹴られた日。二人三脚の相手の男子が、どうしても肩を組むのを嫌がり、私を引きずってゴールした日。途中で転び、スリ傷だらけになって体操服が砂にまみれた。


 たくさんの嫌なことがあった。
 家でも、継母に何かと妹と比べられ「あんたはトロい」「何もできない子やね」と叱られてばかり。

 死にたい、死にたい。
 死ねば楽になる。
  
 
 でも、雑誌のコメントに書いたとおり。
 私はたった一人の人のお陰で死なずに済んだ。


 おじいちゃん。

 
 継母の父だから、血はつながっていない。
 でも、私は彼に愛されているという確信を持っていた。
 死んだら、大好きなおじいちゃんも死んじゃうぐらい悲しむに違いない、と。

 
 大人になった今も、辛い時には亡くなったおじいちゃんの声がする。

 「お前が初孫だけぇ。お前が一番かわいいだけぇ
 
 鳥取弁で、まっすぐ語られる愛情。
 この言葉があったから、私は死ねなかった。
 次の休みに、おじいちゃんに会うために。
 坂の下で、孫が乗った車が着くのを待ちわびているおじいちゃんのために。

 私は「生きてなきゃダメだ」と思っていた。


===============

 いじめで死なせないために。
 周りの大人はきちんと声に出して、言葉で愛情を伝えてほしい
 「言わなくても伝わってるはず」なんて嘘だ。
 

 いじめで死なないために。
 「いじめ」なんて、大人になって振り返れば本当にくだらなくてバカみたいなことだから。  
 そんな頭の悪いヤツラのために、たった一度しかない「生きるチャンス」を無駄にしないで


 たまたま地球が太陽からちょうどいい距離にあって、
 たまたま環境が整って文明を持てる人間が誕生して、
 たまたま戦争も飢餓も無い(今のところは)豊かな国に生まれて。

 こんな驚異の巡り合わせは、めったにない。

 だから無駄にしないで。
 生まれ変わりなんて絶対にない。

 ぷつん、と電源が切れてしまってそれっきり。
 死んだ後に困惑するいじめっ子の姿も、慌てる教師の姿も見ることはできない。
 そんなの、死に損だ


 生きて、生きて、生き抜く。
 
 失恋だって苦しい、失業だって苦しい。
 いじめじゃなくても苦しいことはいっぱいある。

 でも「この世の終わり」と思った苦しいことも、不思議と人は忘れる。
 そしてその分、強くなる。
 

 自分の人生は、他人の笑いやストレス解消のエサになるためにあるんじゃない
 ちゃんと声に出して訴えて、周りの人に助けてもらって、「自分の人生」を取り戻してほしい。
 
 
 いじめで死ぬってことは、大嫌いなヤツラに人生を捧げることと一緒。
 本当に惨めで、もったいなさ過ぎる。


 生きて、生きて、大人になろう
 大人って楽しい。辛いこともあるけれど、楽しい。
 
   
 今、33歳になるけれど、12歳の私に「死なずにいてくれてありがとう」と思える。
 1日ずつ乗り越えて行けば、ちゃんと時間が経って大人になるから。


 人生を踏みにじられたまま、死なないで。

 

 
  

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