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2007.04.20

「詩の授業・実況中継(1)」~詩ってナンだ?

 今年は個人的に添削をしていたので、灘中の問題をたくさん解きました。いいですねぇ、詩を出す学校。

私は詩の授業が大好きです。最初に詩の定義めいたものを教えます。それから、詩で問題を作りやすい表現技法などの「覚えるべきこと」を教える。後は鑑賞問題をやりながら、問題を解くコツを指導します。

久々に実況中継を書いておこうと思います。


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「今日から詩やるでー。まず、君らは自分はこれが好き!とか覚えてる!って詩あるか?」


※ほとんど「好きな詩」を持っている子はいません。
 せいぜい、学校でやった詩程度です。


「そっかー、おらんかー。でも、詩って君ら毎日のように触れてるねんで。えーっと、スーパーの魚売り場に行ったら、アホみたいに流れてる音楽あるやろ。歌える人、ハイっ!」

生徒 「さかなさかなさかなー♪さかなーをたべーようー」


「そうそう、その歌な。あれ、歌のメロディー無しで読んでみるで。『魚 さかな サカナ 魚を食べよう』…ほら、詩やろ」


生徒「ほんまや」


 「じゃあな、先生の好きなこの歌でやってみよう。『千と千尋の神隠し』って映画があったやんか、あの最後に流れる曲。『呼んでいる 胸の どこか奥で いつも心踊る 夢を見たい~♪』ってヤツな。ちょっと全部読むで。あ、それから『らららんらら~♪』のとこはちょっと省略。

 ※一通り読む。

 さて、今読んだのは、普通の話し言葉から比べるとどういう点が違うと思う?」


生徒 「文が短い」「繰り返しが多い」「普段使わない言葉を使う」
※出ない時は誘導します。

「せやな、ちょっと普通の話言葉より、リズムやたとえが凝ってるねん。それに省略が多いから『作者はナニが言いたいんやろ?』を考えながら読まなあかんねんな」


==《落書き用板書》=============

 こなごなに砕かれた 鏡の上にも
 新しい景色が 映される

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 「これは2番の歌詞なんやけど、読んで字のまんまの『割れた鏡にも景色が映ってる』だけの意味じゃないと思うねん。めっちゃ難しいと思うけど、詩を書いた人の伝えたいことをがんばって考えてみよう。この歌の題名って『いつも何度でも』やっていうのもヒントかなぁと思うし、実際に入試問題で詩が出る時も、タイトルは作者が一番言いたいことと関係あることが多いねん。

 『こなごなに砕かれた鏡』って、どんな感じがする?プラスのええイメージか、マイナスの悪いイメージかだけでも考えてみよう。どっちやと思う?」


生徒「めちゃくちゃな感じがするから、マイナス」


「そうやな、もう割れた鏡ってもどらへんし、『こなごな』って漢字で書いたら『粉々』(書く)やん!粉みたいに割れてしまったたら、直すの無理やんな。でもな、この詩を書いた人は『その上にも新しい景色が映される』って書いてはるねん。『新しい景色』ってプラスかマイナスかどっちやと思う?」


生徒「プラス!」


「そうそう、ポイントは『新しい』ってわざわざ形容詞がついてるところやね。もうダメになった鏡にだって、新しい景色が映されている。ダメだ!と思った時でも『いつも何度でも』新しい気持ちでやり直そう、そういう意味があるんちゃうかなーと思います。


 今はこの部分だけ取り上げたから、そういう『あきらめずにやり直そうぜ』みたいな詩に読めるけれど、もっともっと詩の世界というのは受け取り方が自由なものだから、『ここが好きやなー』『この言葉、自分の気持ちに合うなー』というのをたくさん見つければそれでいい。

 ただ、入試にはやっぱり出るやんか。今のところは、先生がもしこの詩で問題を作れって言われたら、ここを問題にできるなと思ったところ。そういう『部分的な読み取り』が出やすいので覚えておいてちょうだい。


 最後に、先生がこの詩で一番好きなのは『ゼロになるからだ』っていう言葉やねん。今はこうやってチョークも持てるし、しっかり立ってられるし、宿題忘れを怒鳴れるし、自分の身体があるから色んなことできるけど、どんなにがんばって長生きしたい!死にたくない!って思っても、最後にはこの身体がキレイに無くなる日が来るねんなーと思ったら、大事にしよっかなと思うやん」


生徒「骨は残るやん」
※過去に、こういう屁理屈小僧がおりました。

「そーや。骨は残るけど、お墓の中の骨がチョーク持って授業したら恐いやろ(笑)。骨になったら、なーんもできへんやんか。やっぱりそれは『ゼロ』なんやと先生は思うで。だから○○(発言した生徒)も、今の自分の身体を大事にしてな。


 さて、詩ってこんなに短いくせにめっちゃ意味が隠されてて難しい。でも、だから面白い。普通の文章で言っちゃうと『春になって雪が解けました。雪で家に閉じ込められていた村中の子どもが、喜んで外で元気に遊んでいます』という内容が、世界で一番短い詩と言われてる俳句になると『雪解けて 村いっぱいの 子どもかな』ってめっちゃシンプルになる。でもこの方がカッコいい。

 だから、詩にはカッコよくするための『表現技法』ってのがよく使われているので、これを覚えよう。入試にも出るから、しっかりノートに写してちょうだい」


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 …という流れで、表現技法に移ります。最初に詩の分類を教えていた時期もありますが、一番面白くないため、詩を嫌いにさせそうで後に回しています。

 この「いつも何度でも」は、ここ10年の日本の音楽市場に出回った歌詞の中で、もっとも深く美しい詩だと個人的に思っています。映画が公開された夏、ある商店街でこの曲が流れ始めると、子どもたちが合わせて歌いだしたことがありました。なんて美しい夏だろう、と思ったものです。


 「生きていく不思議 死んでいく不思議」

 たった2つのフレーズにこめられた奇跡。
 

 人生の一回性に気づかずに他人を傷つけ、貴重な日々を無駄に過ごしていることにハッとさせられます。子どもにそこまで教えるのは難しいのですが(思想の誘導にもなりかねないですし)、「人生は一回しかないんだ」というメッセージを伝えられたらと思って、導入に取り入れていました。


 後は子どもが喜ぶだけの詩のプリントってのがありまして、面白い詩を集めたものを配ってみんなでゲラゲラ笑って読んでました(今は著作権がらみで、こういうことが本当に難しくなりました)。特に、子どもたちは谷川俊太郎の「なんにもいらないばあさま」が大好きで、ぐるぐる繰り返しっぱなし。

 言葉遊びとからめた創作の授業もあるので、また書いてみたいと思います。
 ひとまず次回は「表現技法」の実況中継を。


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