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2007.09.23

雑談:「受験の神様」に泣く(1)

◆ドラマ「受験の神様」公式サイト
http://www.ntv.co.jp/juken/

 

 

 8月に久々に塾の現場に立ち、小4を担当しました。彼らに「受験の神様」観てるかーと聴くと、クラスの8割が手を挙げました。その視聴率が最後まで継続したかはわかりませんが、私は6話を除いて最後まで観てしまいました。

 

 

 「神様」の棒読み演技(意図あってのことでしょうが)や、ステレオタイプな教育ママの描き方などドラマとしてそりゃー普通の人が観たら難はあるんですが、単純に塾教師のツボにハマって7話・8話ひとつ飛ばして最終回と泣いたりしている情けない有様。

 

  
 ここで唐突にご報告なのですが、私は現在妊娠9ヶ月です。
 11月に出産を控え、少々涙もろくなっていると言い訳をしつつ…

 

 7話で「絶対無理!」とみんながからかう難関校を諦めきれない女の子が、「私はこの中学に行きたい、受験させてください」と涙ながらにお願いするシーン。11歳、12歳で本当に「行きたい学校」なんてどうやって見つけるんだろうと思うんですが、実際の生徒でも「ここに行きたい!」と強い意志を見せる子がいる。誰かに言われて勉強していた頃と、明らかに表情も取り組み方も変わります。

 

 そこで家庭教師の「受験の神様」とやらが答えるのです。
 「私が合格させます」と。

 

 塾教師から言わせてもらうと、本来は受験指導はチームプレーなので各科目担当が力を合わせて頑張らなくちゃいけない。そもそも1人で受験指導のすべてをやってる時点でファンタジーなのですが、このセリフは塾講師として一番言ってやりたい、でも言っちゃいけないセリフだよなぁと思います。

 

 「国語の成績は絶対に上がる」
 「合格するレベルまで引き上げてやるからついてこい」

 

 このぐらいまでは言えますが、「合格させます」って重~いセリフなんですよ。昔、これでよく算数の先生とケンカをしたことを思い出します。国語や社会って追い込みが効くし、「合格ラインまで伸びない理由」を探す方が難しい(私はそう信じています)。理科もまだ暗記分野の余地がある。

 

 でも、算数の先生は見切りが早い傾向にあります。実際、過去問や模試の解答用紙を前に「この生徒が伸びない理由」を説明されると「やっぱり無理かも」と気弱になるのですが、そこを何とか!志望校の傾向に合わせて少しでも伸ばしてくれ!他教科でカバーするから!と強くお願いして指導してもらうことも多々ありました。

 

 受験の神様の「私が合格させます」は、言いたいけれど言えないセリフの筆頭
 過去の「第一志望校に焦がれ続けた子ども」を何人か思い出して、思わず泣いてしまいました。

 

 

  8話は受験ドラマってことと無関係に「おじいちゃん子」には号泣の回。

 

 子ども目線から見たお通夜から葬式を、時間の8割も使って丁寧に描いていたのにびっくりしました。最初は好奇心と慣れない正座にそわそわしていた子ども。弔問客たちが自分の知らない祖父の姿を語ったり、遺影を前に泣き崩れるのを見て「何か」を悟っていく。この「何か」は“死”であったり“生きることの意味”であったり、自分を支えている周りの人の存在かもしれない。子どもの心の中に感情の原型がぷちっと生まれる瞬間を、よく描いているなと思いました。

 

 それが国語の心情理解につながって小説文ができるようになる…ってのは安直に過ぎても、「感情の経験値」が低い子どもがホンマに小説の読解ができないのは事実。

 

 この回は「泣きのツボ」をよく心得て作ってあり、お守りから出てきた写真を見た瞬間に号泣ですよ。私はおじいちゃん子だったので、参りました。

 

 
 そう言えばこの夏、ある生徒に「お祖母ちゃんが死んじゃったんだけど、どうすればいい?」といきなり聞かれました。小4なりに、感情のやり場に困っていたんだと思います。私は「覚えていてあげて、そしてお祖母ちゃんの話を色んな人にしてあげて、できれば、あなたが生きている限り」と答えました。

 

 先日、出産したばかりの友人を訪ねた時、こんなことを言ってました。

 

 「父がこの子が産まれる3ヶ月前に亡くなって、父が建てた家も取り壊したのね。父が居たという証拠がどんどん消えていく。あー、人間ってはかないもんだなって思った。覚えてるって言っても、せいぜい2世代ぐらいじゃない?この子はもう父を知らないし、ましてやその子どもは全く知らない。……はかないよねぇ」

 

 新生児を前にして死を語るというのは不思議なものですが、ある意味、子どもっていうのは死に対して怖いもの知らずなところがあります。逆に大人たちは、日々に追われて「明日死ぬかもしれない」儚さを忘れている。

 

 自分が何を残せるかわからないけれど、死んだ後にもし嬉しいとしたら「忘れないでいてくれること」ではないかと思ったので生徒にそう答えました。実際、私は亡くなった祖父の話をあちこちで話し、書くようにしています。そうすることで、大好きだった彼が生きた証を少しでも残せるのではないかと。

 

 受験テクニック以前に、自分の人生の中に「死」が必ずあること、そこから逆算して「生きてる自分」って何なんだということ、自分と誰かがこの世で出会ったことの意味を、国語を通じて考える機会になればと思っています。

 

 たかがドラマですが、そこまで考えさせられた8回には驚きました。

 

 「死ぬまで勉強」というおじいさんの教えも、受験戦争に巻き込まれている子ども達に伝えるメッセージとして非常に納得が行く。小6で勉強終わり!後は勝ち組コースまっしぐら…「楽させてやりたい」で受験をさせる保護者は多いのですが、そこからの「学び続ける人生」の方がずっと長いんですよね。

 

 
 次は、最終回を見た感想など書いてみたいと思います。

 

 
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