雑談:「受験の神様」に泣く(2)
「読売ウィークリー」のリレーエッセイが、現在発売中の号に掲載されています。
今回は「塾でのいじめ」について取り上げました。
詳細はこちらのサイトに掲載しています↓
教育レポート/edurepo http://edurepo.com
>>前回の「『受験の神様』に泣く(1)」からどうぞ。
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最終回は、ただただ「塾教師の一番長い日」=「合格発表の日」の追体験でやたら泣きまくり、ものすごく疲れました。
塾では合格発表は生徒からの報告を待つことが多いのですが、本部からの指令で学校を割り振られ、全員の合否を見に行かねばならないという仕事がたまにありました。落ちた家の子は電話してこないこともあり、嫌な仕事でした。
気にかけている生徒が受けている会場で、番号を探す。
無かった時の、絶望感。
ここで冷静でいられる講師の方が、プロなのかもしれない。
でも私はいつも泣き崩れてしまった。
あの子がどれほど泣くだろう。
なんで受からなかった?
なんで?あんなにやったのに!?
ドラマの中では「あなたは悔しくないの?私は、悔しい」と家庭教師が落ちた子に言うのですが、本当に悔しいんです。しかし、これが「受験」特に中学受験の怖さだと知り尽くしているのも自分です。
私は今も、入社して最初の上司を尊敬しています。
彼は別に仕事ができる敏腕校長でも何でもありませんでした。
今なら大問題でしょうが、時間がある時は塾の名前入りジャンパーを着て商店街のパチンコ屋に消えてしまい「はい、チョコレート♪」と無邪気に戦利品を差し出すような、とんでもなくダラシない社会の先生。
社員になって最初の年。
不合格の報告に来た生徒と保護者を見送った彼が、なかなか入ってこないのでそっと覗きに行くと、泣いていました。「あいつ、受からせてやりたかったなぁ」とつぶやいたのが、聴こえました。校長なのに、営業やマネジメント業務より授業の方が好き。生徒を構うのが好き。生徒も先生が大好き。
中学入試は絶対的に必要なものではない。
子どもの時間と精神力と、保護者のストレスを必要とします。
それをサポートするために塾が存在します。
塾を作った以上、売り上げがないと会社が潰れます。
生徒を集めるためには合格実績が必要です。
その大人の思惑、異常事態に取り囲まれている子どもとの間に、少しでも温かな「つながり」を持ちたい。逆に言えば、異常事態だからこそ子どもと私たちは強烈に濃い時間を過ごす。落ちて悔しくて涙が出るほど、本気でやってなきゃ意味ないよと上司に教えられたような気がします。
「受験はゴールではありません」
……ドラマの中のセリフにそうだともと思いつつ、それでも最後に補欠合格の電話に駆け出す親と子の気持ち、そう、やっぱり志望校には行きたい!当たり前だ!いくらご都合主義でもドラマの中でも「よかったねぇ」とまた号泣。
中学入試のドラマ性や緊張感を取り入れつつも、単なるお受験ノウハウものに終わらず「少年成長モノ」になっていたのも良心的なドラマでした。
「あなたは受験がしたいの?それとも勉強がしたいの?」
これは、保護者がドキッとするセリフですね。
子どもが宿題やテストをこなしながらも、毎日触れるニュースや数字・言葉に興味を示すようになっていれば、その受験はムダにならない。目の前の合格ラインに届かない生徒を引っ張り上げながら、国語の楽しさや文学の本質を教える。そういう授業がしたいと改めて思いました。
同時に、「受験は過程が大事」とキレイごとを言いながらも、
「結果出してやってナンボやろ」という欲もあり。
塾講師の抱える本音と建前を、ラストで痛感。
受かった子、受からなかった子。
たくさんの生徒の顔を思い出した最終回でした。
《余談》
難を言うなら、学校の描かれ方が酷すぎです。
・携帯やゲームを持ち込んでいるのを取り上げない
・「塾の授業みたいに面白くしてくれ」の発言に反論しない
・生徒の意見で授業内容が変わる
他にも気になったところがあったのですが、担任教師のへタレっぷりには別の意味で泣けてきました。
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コメント
私も「受験の神様」は、現在私立中学1年の娘と一緒に見て、泣きました。
それにしても!先生もうすぐご出産なのですね。いよいよ赤ちゃんとのご対面、楽しみですね。私は子どもが2人ですが、それぞれの出産を今でもよく思い出します。
無事のご出産、お祈りいたしております。
投稿: まめ | 2007.10.30 19:47
まめさん
>私も「受験の神様」は、現在私立中学1年の娘と一緒に見て、泣きました。
意外と良作だったなと思います。子役が巧かったですねー
>それにしても!先生もうすぐご出産なのですね。
>無事のご出産、お祈りいたしております。
ありがとうございます!おかげさまで、11月7日に無事、女児を出産しました。今はグズリ泣きに悩まされています(笑)
これからどんな言葉を獲得していくのか、国語教師としても興味津々です。
投稿: クロネコとと | 2007.12.19 16:50