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2008.04.16

国語講師の予習について

 ご無沙汰しています。何とか育児も5ヶ月を過ぎ、慣れてきました。
 
 塾講師の方から質問があったので、「予習の仕方」をまとめてみます。先生によって授業の考え方や予習法は違うため、あくまで参考程度にしてください。


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 学校教師ほど指導案にうるさくないのが、塾講師。カリキュラムは多くの塾でテキストのページ割り振りだけで、細かい到達目標や授業の進め方まで作っている塾は少ないはず。前にも書きましたが、そもそも塾業界で「国語」という教科は「文系やったらやれるやろ」となめられがちです。

 私が数箇所行った塾では、ある程度のカリキュラムとマニュアルはありましたが、テキストのどの文章を取り上げて授業に使うかは任されていました。

 校長になって2年目ぐらいの頃。授業数と業務が多過ぎて、自分の授業の質が激しく落ちました。生徒に解かせている間に自分も解き、即席で解説を構築して授業するという酷い状態が週に何日も。それでも生徒の「わかる」を引き出せている、あいつら成績伸びてるやん、と言い訳していました。

 ただ、この方法もまったくダメではなく、メリットも少しはあります。国語演習は「解いた文章が記憶に残ってる間に解説」するのが効果的なので、夏休み講習前にみっちり予習した文章より印象は鮮烈です。さっき思わず間違えかけた選択肢は、おそらく生徒も引っかかりやすいところ。解説のポイントとして強調します。

 それから「解いている生徒」を見るのは授業を作ったり、生徒個人の力を伸ばしたりするには向いています。机間巡視をして、空欄や記述の解答、解く時の態度を見て回っておきます。

 私は「本日のお土産」として、言葉の意味や対義語・文学史ネタをいくつか持って帰らせるようにしていたので、それも解きながら確認します。怒るプロ教師の方が山ほどいると思いますが、私は電子辞書を授業に持参していました。生徒から思いがけない質問を受けた時、「ほな調べるわ」と済ませる方がロスが少ないからです。漢和・和英・英和・広辞苑が入った電子辞書で、外来語が含まれる論説文も多いので重宝しました。

 しかし、電子辞書を「授業時間でやっつけ解説を作るため」に使っている状態は自分でも情けなくなる日々でした。予習はしたい、でも時間が無い。塾を退職して非常勤講師として久々に授業を持った時、めいっぱい予習ができる幸せを感じたものです。

 塾講師は、学校の国語とは違って1つの文章にこだわっている時間はありません。大事なのは「今日の授業は実力をつけるために、どんな役割を果たしているのか?」を考えて、授業を組み立てることです。

 まず、年間カリキュラムとテキストを見通す。

 文章読解は週に宿題を含めて2~3問ペースだな、論説文が2回出てくるな、漢字はこのテキストで定着させるんだな、あれ、俳句・短歌はまとめて1コマだけ!?(ホントにどこかの塾でありました)

 生徒が受験に太刀打ちできる学力をつけるのに、大きなポイントは「語彙力/読解力/解答作成能力」の3つの力。これに「スピード」が加わります。

 この力をつけるのに、必要な演習量はどれだけだろう?と考えると、テキストの使い方や宿題の出し方が見えてきます。このあたりは、過去記事が役立つと思います。

 トレーニング式・国語学習法~実践編
 http://toto.cocolog-nifty.com/kokugo/2004/04/post_2.html


 私の初回の授業は「1週間の使い方」「宿題のやり方」「小テストの活用法」を考えて、紙にまとめて配ることから始まります。ルールを最初にきちんと決める。すでに新年度に入っていますが、現在の宿題の出し方が実力に直結していないなと思うなら、すぐにでも切り替えればいいのです。

 それから、個別の授業を生徒のレベルを計りながら組み立てます。「論説文」がカリキュラムだったとして「論説文」とは何かを解説するべきか、それ以前に線を引いて読む方法を教えるべきか、今回は素材が手強いから文章解説に全力集中するかを考えます。

 参考までに、私の平均的な授業の流れを示しておきます。

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 (1)テクニックを1つ板書 
    >選択問題、指示語、書き抜き、詩や短歌の基礎知識など
     ※過去記事一覧に、指導法があります。
     http://www.kuroneko-kokugo.com/study.htm

 (2)解説に入る前に、宿題の文章に出てきた語句や文学史を板書
    >小学生には「おみやげノート」を作らせていました。

 (3)解説する問題の小問に、配点とランクをつける
    >テキストの問題には配点がついていないことが多いので、50点満点設定で点数をつけてテキストに書き込むよう指示をしていました。

 ランクというのは「A:できんかったら恥ずかしい/B:平均点欲しかったら取りや/C:これできたら賢いで/D:できんでええ」というもので、関西弁なのは適当に地元の方言に直してください。小問が10あったら、「BとC」に解説のポイントを絞ります。よってAランクの漢字の書き取りや文法問題は、黒板にざーっと答えを書いておしまい。小刻みに教えるより、文法や知識問題だけやる日を作る方が効果的です。

 (3)宿題の文章と解き方を解説
    >授業で解説する宿題は(1)のテクニックが問題に入っている文章を選ぶ。無ければその場で問題を足し、解かせて納得させます。

 (4)合計点を出させて、聞き取りをする
    >テキストの宿題をいい加減にやってくるか、真剣にいい点を取ろうと思ってやってくるかは、学年が低いほど授業内での盛り上げにかかっています。

 神経質な女の子は間違えた問題を気にしますが、「Dランクやし誰もできてない」「みんなこのぐらいの点数なんや」と把握することで自信をつけ、国語の文章題は「全問完璧に解かなくてもいい」という取捨選択を覚えます。

 逆に「国語ギライ」を公言して努力しない子には「せめてAランクの問題は取ろう」と目標を示すことができます。

 ゲーム世代ですから、点数が出ることは大好きです。ただ課題を解説して丸付けをするより、ちゃんと配点をしてやるとぐっと意識が高まります。当然ですが、宿題は時間を計って解かせてきます。大問1つで15~25分の指示をしていました(どこかに書いたかもしれません)。

 時間内に解けなかった問題は、☆印を問題につけた上で解答してくるよう指導しています。点数を言わせながら巡回していき、「問5、あってるけど時間がなかってんな。読むスピード上がったら+10点やん!」と声を掛けます。この指導をしないと、生徒は時間を意識して解くこともせず、わからない問題を最後まで粘ることもしません。両方の力が必要なので「家で文章題を解く」際のやり方は口うるさく言っていました。


 ポイントをもう一度整理すると、
 
 ●宿題のルールを決める 
 ●1つの文章から「お土産」と「解説すべき問題」を抽出する
 ●ランクと配点をつける
 ●解説する問題を絞り込む>次回以降も使えるテクニックと連動させる
 ●得点を出させる>課題を認識させる

 このやり方で指導を組み立てていきます。

 あとは前にも書きましたが、いかに宿題をやらせきるかがポイントです。漢字を覚えるのも読解を重ねてスピードアップするのも、本人しかできません。

 参考:「強制力」というスキル
  http://toto.cocolog-nifty.com/kokugo/2006/09/post_99d7.html

 子どもの「やる気」に火をつけ、燃え尽きないようにコントロールする力量が、塾講師に不可欠なスキルではないかと思っています。


――――――――――――――――――――――――

 慣れない先生は、完璧な板書ノートを見ながら黒板に写しているだけで授業が終わってしまい、一方通行になりがちです。予習をコッテリやり過ぎて、睡眠不足という先生も多いのでは。

 文章の内容解説は、落書き用の板書スペースを作ってそこに書きながら進めていくといいでしょう。文章の解説を写させたところで、彼らが問題と読み合わせて確認する機会は一生来ません。おそらく。ノートには次回からも使えるテクニックと、入試によく出る語句や知識が残っていればいいのです。

 そして、板書ノートを作る時間を生徒が受ける入試問題を解くことに使ってください。同じ学校を3年分続けて解くと、傾向が見えてきます。それを「これは大阪星光がよく出すタイプの問題やな」とか「平成17年の同志社香里で出た漢字や」などと授業の解説に盛り込むと、受験学年は特にテンションが上がります。受験学年でなくても、「大阪の公立入試はこういう文章が好きやねん」と言うと、中1や中2もぐっと身を乗り出してきます。

 本当は、ここで文章読解の授業を文字で再現するか、動画か音声で提供してみたいのですが、元の文章と問題に著作権があって難しいので断念しています。イベント授業でやった時には、星新一の文章で問題を作りました。

 ※余談ながら、NHKで放映中の「星新一 ショート・ショート劇場」はクリエイターのレベルが高くてビックリ。それ以上に「この話、ホンマによくできてる!」と改めて星新一の才能に惚れ惚れし、文庫本を買いに走りたくなります。
 
 
 長々と予習について書きましたが、「教師なのに答えを間違えて凹む」なんて誰でも通る道です。「君らが間違い見つけるか試してたんや~、よー見つけたなぁ」とごまかす、ベテランならではの図々しい対応を身につけるも時間の問題です。

 新人先生は生徒と一緒に成長する気持ちで、演習量の確保だけ忘れずに取り組んでみてください。


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コメント

はじめまして。
本年度から塾の講師をはじめた新米です。
ネタ探しをしていたところ、ここにたどりつきました。私の塾では、授業について具体的に指導をうけたり、他の先生の授業を見たりする機会がなく、自分の国語の授業について本当に悩んでいました。自分の授業が迷走してるのはわかるけど、どうしたらいいのかわかりませんでした。私自身ゼロから何かを作れるタイプではなく、なんらかの指針がほしいと思っていたところ、このページを見つけました。難破船がやっとの思いで灯台の光を見つけたというような感じがしています!もう食い入るように読み込んでしまいました(笑)。いくつかのネタもパクッて使っちゃいました(すみません)が、私のキャラとかクラスの雰囲気とかも違うので、ただ真似すればいいってもんでもないですね。でも、肉付の仕方とか方向性は納得できたので、あとは自分の感性で自分なりのものが作れそうな気がしています。こんなにすばらしい情報を公開してくださってほんとうにありがとうございます!あと、私が昔からネットで使っている名前「まるぽうろ」も、飼っている黒猫の名前です。勝手ながら親近感を感じちゃってます。

投稿: まるぼうろ | 2008.06.13 01:23

まるぼうろさん

嬉しいコメントありがとうございます!

>私の塾では、授業について具体的に指導をうけたり、他の先生の授業を見たりする機会がなく

これ、本当に問題アリですよね。せめて授業見学は、強引にでもお願いした方がいいと思います。見られても大丈夫なレベルの先生がいないというワケではないでしょうし…

>難破船がやっとの思いで灯台の光を見つけたというような感じがしています!

そんな風に言ってもらえると、がんばってしまいます(笑)素直に嬉しいです!

>いくつかのネタもパクッて使っちゃいました

どうぞどうぞ!
どこかの塾で、私の経験が役立ってるかと思うと幸せな気分になります。

>でも、肉付の仕方とか方向性は納得できたので、あとは自分の感性で自分なりのものが作れそうな気がしています。

そうなんですよ、ここに書いてあるのは、あくまで授業をどう組み立てていくかの事例の1つに過ぎません。絶対的なルールでもマニュアルでもないので、自由にアレンジしてください。


>あと、私が昔からネットで使っている名前「まるぽうろ」も、飼っている黒猫の名前です。

それはそれは、クロネコ仲間ですね(笑)
もう一度飼いたいんですけど、ネットの中でこうして生きてるような気がします。

これからも質問やご希望の単元があれば、時間を見て書きますので、お気軽に書き込んでくださいね!


投稿: クロネコとと | 2008.06.16 18:56

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