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2011年5月 2日 (月)

世界選手権2011:女子FP

 シーズン最初の予想通り、今年は「美姫の年」だった。
 かつての優勝とは意味も出来も全く違う。

 

「女王の滑り」オーラを発している。

 4年前のエキシビでは世界に向けて絢香の生歌で滑るという、勘違いエキシビで頭を抱えさせてくれたが、今回のエキシビは彼女が一段も二段も、人間的に成長したことが伝わる想いのこもった滑りだった。

 1つミスをした時点では、もう諦めていた。

 

「ああ、キム・ヨナの優勝か」

 SPの順位と点数には、私はまだ納得できていない。
 3-3を冒頭にぶっ放して、ノーミスだったなら仕方ない。
 失敗したジャンプに加点をつけているジャッジが、1人混じっている。
 そんな状況で、勝てるとは思えなかった。

 疑心暗鬼が、選手の努力や純粋に試合を見る目を曇らせる。

 今回、祈るような思いで観ていた。

 それは勝手な私のフィギュアスケート鑑賞における考え方による。「1年通じて試合に出て、一喜一憂しながら磨きに磨き抜いた選手が優勝すべき」。だから「キム・ヨナ以外なら誰でもいい」という気持ちだった。

 そこに愛国心や真央のライバルだから、という気持ちは無い。

 

 10年前、スケートの映像をテレビで観るのは年に数回だった。

 必死で関西の深夜枠を探し、ネットの掲示板で知り合った人からビデオテープを買った。CS放送もYoutubeも無かった。

 情報が入ってこないから、世界選手権でいきなり今シーズンの「最終形」を観ることになる。過程を見ていないから、今よりずっと傍若無人な感想しか抱けなかった。

 スケートブームのお陰で、ここ数年は過程を追いかけられるようになった。

 オフの練習風景、新プログラムの情報、初お披露目、グランプリ・シリーズ、ファイナル、全日本、四大陸。

 子どもがいなかったら、昔のようにヨーロッパ選手権やペアもアイスダンスも詳細を追っていたと思う。CSは入っていたけれど、録画が溜まりすぎて解約してしまった。

 色んな選手が、それぞれに喜び、苦しむ過程を追いかける。
 プログラムの変更、歓喜の試合、どん底の出来。

 小塚選手のノーミス演技の前に、ミスありで優勝した全日本、ボロボロだった四大陸がある。それを知っているから、感激も増幅される。

 その試合に、一切出なかった選手。
 キム・ヨナの孤独な戦いを思う。

 彼女が悪いんじゃなくて、おそらく周りに汚い大人がたくさんいるんだろう。
 顔芸が売りの彼女が、無表情で踊るエキシビ。
 ビヨンセのポップナンバーが空疎に響く。

 その表情を「悔しさ」と名付けるのは簡単だが、負けた試合でも笑顔でエキシビを滑ってきた選手たちの表情(特にトリノのスルツカヤとバンクーバーの真央)を思い出すと、挨拶の時ぐらいファンに笑顔を見せて欲しかった。

 

 「1年」の重みの違い。

 キム・ヨナが久々に味わっている屈辱を、1年の間に何度も味わい、そこからモチベーションを上げて必死で練習してきた選手が報われるべき。今回はその祈りだけがあった。

 安藤美姫は今年確かに絶好調だったが、面白い記事が目に留まった。
 「全日本で私が優勝したのに、復活した真央の記事の方が大きい」と拗ねていたそうだ。

 そりゃー拗ねるよ!

 彼女がヒールを演じさせられてきた、数年間。
 その片棒の端っこをかついでアレコレ書いていたので、すみませんでしたと謝りたくなる。

 その恨みつらみを全て浄化して、SPで微笑んでステップを踏む彼女は美しかった。
 黒女王も気迫に満ちた滑りで圧巻だった。

 おめでとう、参りました、としか言えない。
 各新聞社やテレビは全力で美姫に紙面や時間を割くように!

 ……と思った直後、民放で「キム・ヨナ特集」をやったり、今日のエキシビでも単独インタビュー流したり。 

 マスコミはフィギュアスケートをどうしたいのか、よくわからない。

 

 今年の安藤美姫の勝因は、「勝てるポイントを着実に重ねる」「加点をできるだけ引き出す」積み上げ方式。

 大技一発に頼るギャンブラー真央方式(実は真央も今年は各要素を相当改善していたのに、プロトコルをチェックするとあまり反映されてなかった)ではなく、秀才タイプでキム・ヨナがメダルを手にしたやり方に忠実だった。

 あとはメンタルが強くなったこと、音痴(※)が治り表現力が身についたこと。

 ※音痴……スケーターで音楽に乗れない人のこと。

 

 昔はミスする>音楽とずれる>修正不可で、いつも最後のステップが、腕をぶんぶん振って暴れているだけに見え、落ち着かない印象があった。

 それが実況アナに「音楽との一体感」と言われるまでに成長したこと、そして何度でもタフにリベンジしてくる強さには尊敬しかない。異国の地で積んできたトレーニングが、花開く。

 キム・ヨナの点数が出た時の、安堵感。
 「報われるべき人が報われるべき」
 ミスを喜ぶのははしたない、と思う。
 でも、今回だけは金メダルをやりたくなかった。

 加えて「2位でいいのか」という感想もあるが、キム・ヨナは決してヘタではなかった。
 3-3は鮮やかに決めているし、スピンの高速化は努力の跡を感じる。

 1つだけ、「ここからが見せ場です」とアナウンサーが言ったスパイラルは相変わらずポジションが悪く、進化を期待していた私はテレビの前でがっかりした。

 プロトコルでは真央の上につけていて、真央のスパイラルは点の取りどころなんだから、やっぱりS字カーブ描いてたっぷり見せるべきだったんだよ!と信夫の白髪頭をぐしゃぐしゃにしたい衝動に駆られてしまった。
 すみません、信夫先生。

 

 でも今回でもこのポジションだよ!
  http://www.jiji.com/jc/d4?d=d4_news&p=mao001&rel=j&g=phl
 もっとジャッジ前で滑るべきだ!

 実戦を1年離れてて、ジャンプ・スピード・オーラがあまり衰えていないのは素直に凄いと思う。変な点数さえ出なければ、「帰ってきてくれてありがとうー色んな選手がいてワクワクするー」と言いたかった。

 レオノワちゃんがとびきり良かったので、本当は彼女にメダルあげたかったけど。

 さて、キリが無いので「私よりメダルを取ってない真央の方が記事が大きい」と女王を拗ねさせないために、あとは少しだけ(ホントはどの選手についてもあれこれ書きたいが時間の都合で断念)。

 浅田真央の「1/4」がやっと終わった。
 4年計画の1年目と、ファンとしても割り切りがあったはずなのに。

 全日本と四大陸で欲が出てしまった。
 「出られるだけで御の字」だったやん。
 今回もジャンプの種類は6種コンプリートに挑んでいる。

 毎年このパターン、最後にええとこ見せてくれる真央嬢だが、今回は悲しいぐらいに透き通っていた。「試合前にストイックになりすぎた」「体重を絞るのが早く、4-5キロ落ちて戻らなかった」 信夫は何してたんだよ!とまた白髪頭を(以下略)。

 ふっと前屈みになるだけで浮かぶ背骨に「も、もういいよ、真央……試合なんかやめて焼き肉食べに行こう(涙)」と連れ出したくなった。

 信夫先生とも距離感を感じる、今シーズン初めの固い浅田真央に戻っていた。
 何があったのかはわからない。
 直前に腹痛で2日ほど練習を休んだという記事も見た。

 とにかくスピードが落ちている。
 だからジャンプを回りきれず、流れも悪い。
 ステップは悪くなかった。
 スピンで乱れたのは、膝に力が入っていないせいなのか。

 高橋の靴の件にしても、体調管理にしても。
 「練習量」と「運」は見合わない。

 もちろん、それも含めて管理だと言う人もいるだろう。

 あと、衣装について言わせてほしい。
 「ブティック・タラソワ」は絶対に変えた方がいい。
 ※SPの亀甲縛りはタラソワデザインらしい

 「マオにはこれが似合うと思うのよ~」と押しつけてくる、迷惑な親戚のオバさんみたいだ。似合ってないから。エキシビの女学生衣装は好きだけど。

 「愛の夢」、衣装も音楽も好きだった。
 できれば次のシーズンも滑ってほしい。

 キム・ヨナと同様、色んな大人がくっついてきてアレコレ言うんだろうけれど、救いなのは「4年ぶりに安藤美姫が23歳で優勝した」という事実だ。ついでに荒川静香は24歳で金メダルを獲っている。2人には未来がある。

 女子もジャンプのレベルが上がってハードな試合になってきただけに、美姫が3-3および2半ー3ナシで優勝できたのは運も大きい。来年はまたわからない。

 いずれにしても、浅田真央が勝つことより、ばくばく焼き肉食べてぷっくり太ってくれることを願う私も、「親戚のオバちゃん」の1人なのかもしれない。

 

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